新型コロナウイルスの感染拡大でミニシアターなどの存続が危ぶまれている中、愛知県の大村秀章知事が自身のTwitterで、「ミニシアター、映画館など民間の文化施設は、地域の社会インフラと捉え公金を入れても良いと思います」と書いた上山信一慶應義塾大学教授のTwitterを引用し、「傾聴に値するご意見だと思います。何ができるか、検討したいと思います」と述べた。民間文化施設への新たな支援策の検討を示唆した発言として注目される。
上山教授の意見は、2020年5月21日の朝日新聞朝刊のオピニオンページに掲載。上山教授のTwitterは、それを引用する形で発信された。
朝日新聞の中で、上山教授は、新型コロナウイルスの感染拡大で、芸術・文化に限らず、さまざまな分野で窮状が伝えられる中、民間の芸術・文化施設を税金で支援するには、それが「街の魅力に欠かせない社会インフラ」であるという地域社会の共通理解が不可欠と前提条件を強調。芸術・文化を特別扱いする考えとは違うとしている。
その上で、装置産業であるミニシアターや美術館などの文化的拠点は、いったん潰れると再建は困難な社会インフラだと説明。現在、国や地方自治体による民間の芸術・文化施設への支援の動きが鈍いのは、芸術や文化は「不要、不急の存在」であるという旧来型の発想に縛られているからではないかと問題提起している。
文化・芸術を、経済と対峙させて「特別な存在」として保護を訴えるのではなく、長期的な街づくりと地域経済に貢献できる「社会インフラ」と捉え、たとえ民間であっても、街の発展に必要不可欠なインフラであるという共通理解に基づいて支援できるのではないかというのが上山教授の考えだ。
上山教授は、市民などから一定額の寄付があれば(必要な社会インフラとして市民に認識されているであれば)、自治体が補助金を上乗せして、独自の支援策を打てるのではないかと、提言。大村知事が「検討したい」と述べていることから、今後、新たな支援策が打ち出される可能性もある。