今井俊介《untitled》2017年 アクリル、画布 144.0×385.0㎝
コロナ禍支援の特別枠
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で作品発表の機会が失われている若手アーティストを支援しようと、 愛知県の美術品等取得基金の特別枠1億円で若手作家の現代美術作品を重点的に購入する取り組みの第4弾の作品が、愛知県美術館で2023年1月14日~3月14日に開催されるコレクション展(「展覧会 岡本太郎」「徳冨満──テーブルの上の宇宙」と同時開催)で公開される。
第4弾で最終となる。愛知県美術館は11作家の25作品を購入。2022年度コレクション展の一環で公開する(1作品を除く)。
特別枠では既に、2020年度に第1弾、第2弾として30作家から78作品を購入。2021年度に第3弾として12作家から64作品を購入した。
今回の購入で、特別枠での若手作家の作品購入数は合計53作家、167作品となる。
11人の若手アーティスト
11人は、今井俊介、尾野訓大、川内理香子、キュンチョメ、柴田麻衣、志村信裕、鈴木悠哉、谷澤紗和子、平田尚也、藤田典子、三瓶玲奈。
作家名と作品タイトルのリストは、こちら。
開催概要
期 間:2023年1月14日(土曜日)から3月14日(火曜日)まで
休 館 日:1月16日(月曜日)、2月6日(月曜日)、2月20日(月曜日)、3月6日(月曜日)
開館時間:午前10時から午後6時まで (金曜日は午後8時まで)
会 場:愛知芸術文化センター10階 愛知県美術館 展示室5ほか(名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター10階、電話052-971-5511)
観 覧 料:(愛知県美術館コレクション展)一般500(400)円、高校・大学生300(240)円、中学生以下無料[()内は20名以上の団体料金]
※コレクション展のほかの作品も見ることができる。
※コレクション展は、企画展「展覧会 岡本太郎」のチケットでも見ることができる。
作品
今井俊介
今井俊介さんは1978年、福井県生まれ。武蔵野美術大学出身。作品は、鮮やかなストライプやドットで、風に揺れる旗やテキスタイルのようなイメージを描くシリーズの1つ。
3点のキャンバスは、20センチ間隔で展示されているが、鑑賞者の想像力で空隙を埋めることで大きな広がりを感じさせる。
尾野訓大
尾野訓大さんは1982年、愛知県岡崎市生まれ。長時間露光による風景によって、時間、空間を相対化することで世界と人間の関係に新たな視点を与える作品を発表している。
この作品では、おびただしい切り花を、咲き誇る状態から枯れるまでの3週間で撮影している。数多くの命の死に至るかけがえのない瞬間を集積することで、世界を大いなる命の厚みとして捉えている。
川内理香子
川内理香子さんは1990年、東京都生まれ。 2015年、多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業、2017年、同大学院美術学部絵画学科油画専攻修了。
食と身体性がテーマ。血や肉、内臓を想起させる厚塗りの絵具に、調理を意味する言葉、ジャガーやヘビなどの形象が加わり、体内と体外、人間と動物、自然、自己と環境が混然とした世界を表している。
キュンチョメ
東日本大震災の被災地で、絶滅したニホンオオカミの遠吠えをまねるパフォーマンス映像である。背景にあるのは、被災した東京での電話、メールによるコミュニケーション不全。
ほかに、自宅が帰宅困難地域になった高齢者と、パソコン上の画像編集機能で自宅へ通じる道のバリケードを消す映像や、震災7年後の「復興」が帯びる希望と寂寥感をセミの抜け殻を用いて映像化した作品がある。
柴田麻衣
柴田麻衣さんは1979年、愛知県生まれ。名古屋芸大と同大学院で版画を学んだ経験から、版の発想を生かした重層的な絵画空間をつくっている。
重なるレイヤー、分割された画面、画面にちりばめられた点景によって、現在と過去など複数の時間軸や、異なる空間が対話をするように統合され、世界的な視野で歴史や文化、民族に関わるテーマへと昇華されている。
鈴木悠哉
鈴木悠哉さんは1983年、福島県生まれ。本作「アーキグラフ・スタディ」は、都市に見いだされる形や構造をドローイングのプロセスを経て、その都市の集合的無意識として、独自の記号として純化していくシリーズ。
そうした都市の断片的イメージは、親しみを抱かせながらも、中立的である。分かりやすく具体性や意味に結びつくことはなく、その宙づり感によって、鑑賞者の認知に揺さぶりをかける。アッセンブリッジ・ナゴヤ2016に出品するため、滞在制作された。
谷澤紗和子
谷澤紗和子さんは1982年、大阪府生まれ。「はいけい ちえこ さま」シリーズは、詩人、歌人、彫刻家の高村光太郎の陰に隠れがちな妻、高村智恵子(1886- 1938年)へのオマージュを込めた作品である。
美術家で、自分と同様、切り絵を手がけた智恵子への共感と女性表現者を巡る困難な状況がテーマ。壊された家屋の建材から作った木製の額は、家制度の崩壊と束縛の隠喩になっている。
平田尚也
平田尚也さんは1991年、長野県生まれ。2014年、武蔵野美術大学彫刻学科卒業。物質に依存しない彫刻を模索し、インターネット上で集めたフリーの3Dデータなどを素材に仮想空間上に「彫刻」を構成する。
その上で、そうしたヴァーチャルな構成物を前後左右上下の6つの視点で切り取ったイメージを立体物として再構成した。
藤田典子
藤田典子さんは1988年、大阪府生まれ。愛知県立芸術大学出身。エッチングによって、点や線が集積したような作品を制作している。
作品の多くには、顔のない人物が部屋や洞窟、塀の中など閉鎖空間にいる様子が描かれている。情報やモノがあふれる日常の中で、個人のあり方が希薄化している感覚と、子供の頃からの空想が融合したイメージである。
三瓶玲奈
三瓶玲奈さんは1992年、名古屋市生まれ。2015年、多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。2017年、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程油画専攻修了。
身近にあるものや、風景、静物、経験した出来事をモチーフとした絵画を制作。抽象性と具象性の間で、絵画の性質についての原理的な試行錯誤を続けている。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)