ギャラリーA・C・S(名古屋) 2022年6月11~25日
ACS コレクション
ギャラリーA・C・Sがオープンした1989年以降の企画展の中からコレクションされた銅版画作品を集めた展示である。作品点数は36点。
A・C・Sが名古屋・杁中(いりなか)にあった1990年代ごろに、新聞記者として取材していた筆者としては、懐かしい作家の名前もあった。
中心となるのは、「現代版画NAGOYA」に関係のある作家たちである。また、筆者がA・C・Sなどでの個展の際に取材した作家も多くいる。
主な作家は次の通りである。柴田英年、新海史子、関野敦、杉原功一、土屋敦資、坪井孟幸、野村博、判治佐江子、山本近子、吉岡弘昭、六角尚武、市橋安治、駒井哲郎、佐藤杏子、松田新、芳野太一など。
現代版画NAGOYA
現代版画NAGOYAは、1982年、吉岡弘昭さんや、森岡完介さん、佐藤宏さん、坪井孟幸さん、鈴木広行さんが中心となって設立。1983年に、旧愛知県美術館(愛知県文化会館美術館)で1回展を開いている。
版画芸術の社会への浸透と若手作家の育成が設立の主な狙いである。美術評論家の中村英樹さん、江上明さん、ジャーナリズムの平岡博さん、愛知県文化会館美術館の木本文平さんが関わっている。
1回展には、加藤大博さん、沢居曜子さん、堀江良一さん、山田彊一さんらも参加している。その後、回を重ねる中で、会場での銅版画や木版画の刷り実演 、韓国、タイ、スペイン、中国などでの海外展を開催。
各作家が発表している画廊を巻き込み、協賛企画として、大規模なチャリテー展も実施された。
特筆すべきは、1999年に、土屋敦資さんの企画で、若手のテーマ企画「版表現・拡がる表象 1999」が開催されたことだ。
このシリーズは、「版の手法・版の思考」展、「INDEPENDENT」展と名称を変えて継続され、版の概念を拡張し表現の可能性を探究した若手の発表の場になったが、2007年を最後に終了した。
2002年の20周年には、沿革誌「現代版画NAGOYA 20年の歩み」を発刊した。この20年史をひもとくと、1980年代から2000年代にかけての名古屋の美術史の重要な流れが見えてくる。
それは、当初の理念通り、若手作家へのバトンタッチをしっかり果たしていることからも言えることである。
特に、「版表現・拡がる表象」へと引き継がれ、片山浩さん、川田英二さん、櫃田珠実さん、山口雅英さん、山田純嗣さん、田中栄子さん、吉岡俊直さん、倉地比沙支さん、中田由絵さんなど、数多くの作家が参加している。
本展は、そうした名古屋の美術史、版画史の一端を示すものでもある。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)